隣の世界の覗き窓

映画とか…漫画とか…虚構の世界をレビューするブログです。

Colorful(2010)

Colorful(2010)
f:id:ma_shan:20130417121953j:plain
監督:原恵一 原作:森絵都
脚本:丸尾みほ
キャラクターデザイン:山形厚史
キャスト:冨澤風斗、宮崎あおい南明奈
     まいける、入江甚儀麻生久美子
【作品紹介】直木賞作家の森絵都のベストセラー小説を、「クレヨンしんちゃん」シリーズや「河童のクゥと夏休み」などで知られる原惠一監督がアニメ映画化。原監督と2度目のタッグとなる冨澤風斗、宮崎あおい麻生久美子らが声優を務める。天上界と下界のはざ間でさまよっていた“ぼく”の魂は、プラプラという名の天使から人生に再挑戦するチャンスを与えられ、自殺したばかりの内気な少年・小林真の体に入り込む。真として生き返った“ぼく”の魂は自殺の理由を知るが、その真らしくない振る舞いで周囲の環境を少しずつ変えていく。(映画.comより)

美しい写実世界で縁取られる東京の片隅

特別おもしろいとは思わなかった作品だけど、響く人には響くんじゃないかなぁ。なんといっても実写トレス(たぶん)で鮮やかに描かれる東京の街並が素敵です。主に等々力と二子玉川がリアルに再現され、自殺した主人公の平凡な、でも不自由ないはずの日常が残酷に蘇ります。写実的な映像と、死者の蘇生というシュールリアリスティックな世界が交差し、きちんと独立した世界が立ち現れているのがgoodです。


すごいなぁと思うのが、再現される街並や多摩川の風景が、実際に僕らが目にしている印象に限りなく近いと感じたことです。もちろんアニメならではの誇張をもって描かれてはいるんですが、なんていうんだろう、僕らの目にも、時にこうしたなんでもない風景が素敵に彩られて見える場合も多々あるよなぁ…と。それだけで日常が特別になる瞬間が、確かにあるよなぁ…と、そんなことを無意識に、ダイレクトにハートへ訴えてくる力のある画でした。


f:id:ma_shan:20130417122916j:plain
うっとりするほど綺麗です。

f:id:ma_shan:20100707232754j:plain
薄暗い等々力渓谷もご登場。

お芝居もいいんですが…

個人的には最後まで主人公の真を演じる冨澤風斗の演技がしっくり来ませんでした。。残念。。なーんか真の絵から乖離して聞こえてきてしまうんだよなぁ…。甲高い声が、しばしば共演するフリプリのそれとどうにも被ってしまって、イマイチ落ち着かないし、自殺前の人間性が顔を出さないのがどうにも力量不足なように感じてしまう。その他のキャストは職業声優ではなく俳優の起用です。宮﨑あおい、麻生久美子南明奈は普段のキャラクターを感じさせない素晴らしい演技でした。やっぱり俳優は俳優なんだなぁ…。特にパッとしない女子をもごもごと演じる宮﨑あおいは面白いし、麻生久美子も自身の年齢より老けた?見事なお母さんっぷり。南明奈もふわっとゆるっとしたアンニュイな魅力のある(でもちょっぴり影のある)ひろか役を好演してると思います。

メッセージについて

当初、「colorful」というタイトルに関して、「世界はカラフルで生き方はひとつじゃないんだよー」みたいなテーマなのかなーと思ってたんですが、実際は「人間は一面的な存在ではない。自分の中にいろんな自分がいて、自分が意図しようとしなかろうとたくさんの自分が顔を出すようにできている。好きな自分も嫌な自分も当然いる。人はアプリオリにカラフルなんだ。それでいいんだよ。」というようなメッセージがこめられていました。なんとなくこのメッセージに真がたどり着くにはストーリーの必然性が薄い気がするのが残念。


でも、真がひろかに対してこれを言うシーンはよかったですね。突然対面した、様子がおかしいひろかに対して、妙に達観して諭してしまう真がまた不自然なんですが…、どちらかというと、真とは違った形で心の中にたまった気持ち悪さをどうにか発露させたいというひろかの姿に胸を打たれるものがありました。(真の場合はそれが自殺というベクトルに向かってしまったわけで、自殺には向かわなくて済む解を真自身が「やり直し」の人生の中で見つけた…ということなのでしょう。)


やっぱり、何より映像の写実性が等身大の中学生の世界を生み出すのに貢献しています。それがこの映画のスタイルでしょうね。


観る人によっては、結構楽しめるんじゃないかな〜。



【映画】 カラフル 予告編 【HD】 - YouTube


カラフル [DVD]

カラフル [DVD]