隣の世界の覗き窓

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宇宙ショーへようこそ(2010)

はろう。まぁちゃんです。

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宇宙ショーへようこそ(2010)


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監督:舛成孝二 
脚本:倉田英之
キャラクターデザイン:石浜真史
音楽:池頼広
アニメーション制作:A-1 Pictures
キャスト:黒沢ともよ、生月歩花吉永拓斗
     松元環季、鵜澤正太郎、藤原啓治

【作品紹介】美しい自然に囲まれた山奥の村川村。周、康二、倫子、清、町から転校してきた夏紀と、小学校の全校生徒はたった5人しかいないが、みんな仲良く毎日を過ごしていた。ある日、夏休み恒例の合宿で集まった5人は、いなくなったウサギのぴょん吉を探しに裏山へ向かうが、そこで見つけたものは巨大なミステリーサークルと怪我をした犬だった。5人に手当てを受けたその犬は、惑星プラネット・ワンからやってきた宇宙人だった。TVアニメ「かみちゅ!」で脚光を浴びた舛成孝二監督の劇場長編デビュー作。(映画.comより)

次世代のドラえもん映画

今作、とっても楽しく観ることができました。作品のタイプとしては劇場版「ドラえもん」とか「クレヨンしんちゃん」みたいなカテゴリですね。ある日、突然子ども達の前に現れる非日常。異世界に巻き込まれながら自分たちより遥かに大きな“敵”を打ち倒して帰ってくる一夏の冒険。友情あり、甘酸っぱい恋の芽生えあり、お涙あり、おっぱいあり(なかった)の成長物語……。


オリジナル作品でこういうジュブナイルな長編アニメって実は最近あるようでなかったと思います。それこそドラえもんを代表とするシリーズものとかくらい。ジブリにも近い匂いの作品はあるけど、あれは基本少女の冒険なので全く別もの。近いとこだとサマーウォーズ?と思う人もいるかもしれんけど、あれはあくまで日常の延長にあるリアリティを持たせたSFでファンタジー色は薄め、テーマとしては家族愛やラブコメ要素が強いよね。


あくまで「ドラえもん」なので、ご都合主義に現れる協力者の皆さんや、子どもの力で解決できちゃう命がけな紛争、サイエンス・フィクションとしては突っ込みどころ満載の宇宙テクノロジーetc...にはあれこれ文句をつけないのがお約束。そんな大人は野暮ってもんです。その辺を割り切ってればこんな楽しい世界を僕らにプレゼントしてくれた制作の皆さんにはひたすら感謝せずにいられません。


『宇宙ショーへようこそ』 予告編 - YouTube

抜群の芝居と映像美、そして細かな作りこみ

子役5人+藤原啓治

いやー、なんといってもお芝居が素晴らしかった!!
主役グループの小学生5人(女3男2)は全員ほぼアフレコ初体験の子役達。彼女らのイノセントな演技が本作の一番の見どころでしょう。そしてそれを支えるのが宇宙人(宇宙犬?)役のベテラン実力派声優、藤原啓治。子ども達の表情豊かで奔放な演技をさすがの技巧でまとめています。彼はギャグ要素のある2.5枚目を演じると本当にピカイチですね。


どうやらアフレコは夏休みを利用して8日間ほどで行われたようですが、キャストにとっては実際に村川村の小学校でさながら合宿をしているような雰囲気の中で行われたようです。キャストの年齢もそれぞれのキャラクターとほぼ同じ。キャラ同士の人間関係がそのまま役者同士の人間関係にリンクしていたようです。そこに一人牽引役で子ども達に囲まれる藤原啓治。まんま作品の中と同じ環境ですね。こうした制作過程が結果的に作品へダイレクトに影響していると思います。素晴らしい。


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子役5人+藤原啓治


わさびをめぐる冒険(笑)と成長群像劇

基本的な主要プロットは、 ナツキとアマネが仲直りする話。そしてわさびをめぐる奇妙なSF活劇。それからサイドストーリーとして他キャラクターのちょっとした葛藤と成長が絡んでくる。わさびを巡る宇宙の冒険はふわふわもこもこした動物的なかわいさと、未来的なメカデザイン、レトロクラシックな町並みや美しい日本の田舎景色、バラエティにとんだクオリティの高い映像で魅せてくる。作り込まれた飽きない物語になっています。


個人的にはメインプロットになっているナツキとアマネの話にオリジナリティを感じました。しっかり者の妹分と、何処か抜けてておっちょこちょいなお姉ちゃん。いつからかぎくしゃくし始めてしまった二人の関係が、クライマックスで本音をぶちまけることで修復するという、まぁありがちっちゃありがちなんですけども、年齢差のある女のコ同士の「本音の叫び」やロボット(ペット大王?)をぶん回すナツキの姿がとっても爽快。物語全体がきちんとそこへ収斂していくのがいいですね。

とにかくナツキが魅力的

まだ性差がはっきりしてくる前の、元気いっぱいで快活な5年生。ヒーローに憧れる彼女ですが、別にオトコオンナとかボーイッシュな女子というわけではなく、単純に二次性徴前の奔放な女のコという感じ。
僕は彼女が「なるたる」という漫画の主人公シイナにそっくりなので、なんとなくシイナをイメージして作ってるんじゃないかなーと勝手に思ってます。スケボー風の物体に乗って空を自由に飛び回る運動神経抜群少女(笑)これ、まんまシイナなんですよねー。ナツキは黒沢ともよさんの演技が素晴らしく、今作の顔と言ってもいいでしょう。ラストの方で「サンッ!キューッッ!!」って言い放つところが好きですw

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スポーツ万能のナツキ

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なるたる」のシイナ


戦う理由の説得力の弱さ&説明不足の諸設定…

子ども向け映画にしては

文句を言うのは野暮だぜ旦那……と前述したばかりですが、やっぱりいくつか愛情ゆえのいちゃもんを…(笑)
この映画、ちょっと子ども向けにしてはいろんな設定が分かりづらいところが多々あります。てゆーか、大人が観ててもよく分かりません。結局ズガーンって植物はなんだったのか?ワサビじゃだめだったの?ペットスターやペット大王の意志ってなんだったの?ネッポはどうして宇宙ショーをやっていたのか?あのままナツキ達が止めなかったらどうなっていたのか……などなど、敵側の行動理由がぜんぜん説明されないので、一体どうして戦わなきゃならなかったのか腑に落ちないままクライマックスに突入してしまいます。


一応、子ども達の中ではアマネを取り返して一緒に帰ることが全てだから……という理由があるとは思うんですが、それでもちょっと「さらわれたお姫様を救いだす」というだけじゃストーリーに強度が生まれない。そもそもどうしてさらわれたのかも分からないんだから。(しかも実際さらわれたのはワサビのついでw)


ワサビを使ってネッポが何をしたのか、なぜそんなにワサビを欲しがるのか、(序盤ではワサビに群がる宇宙人が描かれたので、麻薬的な物質なのかなーとかミスリードもありました)そこんとこがもっと直接的に描かれてもよかったんじゃないでしょうか。ネッポの「弱い生き物を合成して強い生き物にすることが正義なんだ」という主張と、「アマネちゃんは小さいけど弱い子じゃない。年長者が及ばない程の秘めたる能力があるし、他に代わりのいないたった一人のアマネちゃんなんだ!」というナツキの主張がリンクするところは物語として非常によくできていると思うのです(ナツキがピョン吉の代わりを買って来ようという発想をポチに説教されるエピソードもとっても活きてますよね)。ところが二本柱で走ってるはずのネッポの陰謀の部分(もう一つはナツキとアマネの話ね)がどうにも説明不足なので、残念ながらいまひとつ効果的に機能しなかったんですよね……。
136分も使ってるんで、そこはもう少しやりようあっただろうな…と思うのです。


(そして何より致命的なのが「宇宙ショーへようこそ」というタイトルのわりには宇宙ショーそのものの魅力が全然伝わってこないこと。宇宙ショーがどのくらい宇宙人を魅了していたのかが映像としてあまり伝わってこない。どちらかというと月の裏側の未来都市の方が子どもたちにインパクトがあったんんじゃないかなー。)



でもま、子どもはそういう細かいところ抜きにして純粋にアニメーションとして楽しめるのかもしれません(笑)
大人があーだこーだ言うのはやっぱり野暮ってもんです。


オリジナル作品でここまで作った製作陣には脱帽。監督にはまた長編映画に挑戦して欲しい。
正直、この手のジャンルをいい加減ドラえもんだけに任せているのはもったいないのでは?と思います。いつの時代も子どもはあんな冒険に憧れるんじゃないかなぁ。


アニメが好きな人や小さなお子さんには観て欲しい作品ですね。
それくらいエネルギーのこもった映画です。DVDに収録されているオーディオコメンタリーもオススメです!!


……と、第一回のレビューをなんとなくしてみたけどどうなのかなーこれ。
まぁ、繰り返しやっていけばスタイルも確立されることでしょう。


いいアニメだったなー。


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