隣の世界の覗き窓

映画とか…漫画とか…虚構の世界をレビューするブログです。

めめめのくらげ(2013)《前編》

めめめのくらげ(2013)
f:id:ma_shan:20130402184659j:plain
監督・原案・エグゼクティブプロデューサー:村上隆
監督補:西村喜廣
キャスト:末岡拓人、浅見姫香
     窪田正孝染谷将太
     天宮静子
【作品紹介】世界的に活躍する現代アーティストの村上隆が映画初監督を務めたファンタジードラマ。村上自身の原案で、少年と“ふれんど”という不思議な生き物たちとの交流を描く。小学生の少年・正志は、引越し先の新しい家で見慣れない段ボール箱を見つけ、その中からクラゲのような不思議な生き物が現れる。その生き物を「くらげ坊」と名づけて仲良くなった正志は、くらげ坊を連れて転校先の学校に行く。すると、他の生徒たちも正志と同じように、大人には見えない「ふれんど」と呼ばれる不思議な生物を連れていた。(映画.comより)


村上隆が映画を造る!しかもCGアニメと実写のMIX作品らしい。そして子ども向けらしい……。そんな映画が公開とあってはとにかく興味だけはムクムクとそそられる。結構期待して観に行ったんですが、なかなか微妙な代物となっておりました。


(以下作品内容に触れます)


詰め込まれまくる日本的/子ども映画のエッセンス
どんなものにも王道・正攻法・メインストリーム…というものがあると思うんですけど、「めめめのくらげ」には誰が観てもわかりやすい様々な日本映画、アニメ映画の仕組みが多数採用されておりました。ある意味ハイコンテクストと言えなくもない。


☆ボーイ・ミーツ・エイリアン
子どもや若者を主人公としたSFやファンタジーに典型的な、ちょっと心に傷のある子どもと人間意外の何か(モンスター、妖怪、ロボット、未来人、宇宙人etc…)が出会い、子どもならではの対未確認生物コミュ力を駆使して心を通わせていく…。基本的にはこれだけで一本映画を造れる典型的なフォーマットが「めめめのくらげ」でも採用されています。本作では“ふれんど”と呼ばれる珍妙な生き物が“エイリアン”ですね。

f:id:ma_shan:20130524003102j:plain
主人公マサシとくらげ坊


☆ジャパニーズ・田舎の夏( & 異端者たる主人公)
夏休みに公開されることの多い子ども映画。必然的に夏休みに行った知らない土地で冒険が待っている…というスタイルが増えます。美しい田舎で未知の生物と駆けまわる子ども達。何度観てもいいんですよコレがね。今作の舞台設定は田舎の夏休み……というわけではないのですが、わけあって母親と郊外に引っ越してきた主人公が田んぼや神社、山の中で暴れます(笑)季節設定も初夏〜夏。なんとなくぼんやりと、既存の子ども映画フォーマットが根底に採用されている気がします。


ポケモン的珍獣パートナー
ポケモン以降、非常に定型的になった子ども×パートナー珍獣の組み合わせ。自分の身体や精神とリンクしたモンスターを闘わせる…その中で成長物語や友情を語る…というやり方ですね。「めめめのくらげ」では“ふれんど”という珍獣たちが子ども一人に対して一体存在しており、“デバイス”(スマホっぽい)で操ります。この構造だけ見るとまんまデジモンの構図と同じです。コロシアムでのバトルシーンがあったり、あくまで肉弾的な戦闘法で闘う……という要素は格ゲースタイルっぽくもあります。目新しいわけではないですが、もはや説明不要で受け入れられるほど現代の日本人や子ども達にはDNAに擦り込まれたアイコンです。VFXを駆使したこの“ふれんど”のアクションが今作一番の見どころです!

f:id:ma_shan:20130524003421j:plain
みんな持ってます。すごい。そしてこわい。


f:id:ma_shan:20130404173506j:plain
バトルシーンは大興奮です。


☆特撮、SF、オカルト…&カルト
ラストは巨大怪獣が出現!みんなで力を合わせて撃退して大団円!…とこれまた戦隊ヒーローやウルトラマン、ドラゴンボールなんかを思わせるジャンル感。研究所で“ふれんど”の研究をする謎の組織?も仮面ライダーが敵役としていたショッカー等のカルトな秘密結社臭がプンプン(笑)しかもそこで主人公のおじさんが研究者として働いてる。さらに、街にはオウム的新興宗教のような団体があり、一定数の大人が入信して研究所と対立しています。



f:id:ma_shan:20130524233636j:plain
最後は巨大怪獣のご登場。



そんでもって研究所の研究内容がこれまたうさんくさく、「天災のメカニズムを画期的な方法で解明した」「宇宙全体を生命と捉えると、天災を生み出しているエネルギーそれすなわち生命エネルギーだ!それをコントロールするのだ!」「その生命エネルギーは子どもが一番強いのだ!」とか言ってます。和風な八卦陣のようなものと機械を繋げて未知のエネルギーを制御しようとするあたり、オカルトSFな各種ジャパニメーションを連想させますな。


いやほんと、ジャパンな雰囲気だけはムンムンと立ちこめている映画です…。


☆父を失った主人公/3.11後の子ども達
今作で一番大きなテーマとなっているのがここんところでしょうかね。主人公のマサシは東日本大震災で父親をなくし、郊外の団地で母親と二人暮らしをするために引っ越してくる。傷を負ったマサシに浴びせられる差別語は「放射能」「お前の親戚研究所で働いてる」。何やら規律ばかり厳しそうな小綺麗な学校。カルト宗教にのめり込むヒロインの母親。問題発覚で親からぶたれるクラスメート。偉そうにするばかりで、内実は混乱している無力な大人…。そんな歪みの中で子ども達の負の感情が膨れ上がり、エネルギーとして溜まっていってるんだぞ……!という設定が(一応)されてます。


ささーっと思いつくものを挙げただけでも結構ありますね…。これだけツボを抑えてれば面白くないわけがない…というくらい盛りだくさんのエッセンスが引用されています。こうやって書き出して見ると、「おいおいこんなに詰め込んだらさぞ重厚でお腹いっぱいな映画なんだろうなー。」って感じしますが、どっこい、なんか薄味なんです。今作。。という僕の印象。。


村上隆氏が映画を造ること自体はすごく楽しい試みだと思うし、彼の造形センス・映像センスやカイカイキキの制作力が映画界に入り込むのも面白い。実際その点に関しては成功していると思う。が、一本の映画として観たときに、やっぱり残念な作品になってしまっていると僕は感じました。


長くなりそうなので一回切って、次のエントリに繋げたいと思います。


めめめのくらげ(2013)《後編》



f:id:ma_shan:20130524234028j:plain
KO2ちゃんが超キュートでした。